自分の考えていることです.
インターネットの拡大と人工知能の進化は,社会構造と相互依存的に人の生活を大きく変化させている.例えばスマートフォンの普及拡大に依って,我々の生活様式が大きく変わったことは否定できない.
昨今の急激な情報化によって,決定論的な社会構造がつくりあげられつつある.このような社会構造の在り方を,ここでは制御社会と呼ぶ.
制御社会では,監視の目は偏在し,機械によって個人が限定される.制御社会の技術は,もはや国家の独占物ではなく,大企業によっても利用されている.例えば、企業のマーケティングに利用されるポイントカードや電子マネーがその一例である.人工知能によれば,我々は自己決定し判断する主体としてではなく,一定の確率や法則に基づいて,その行動を予測することのできる対象として把握されている.そこには、過去の事実に基づいて未来の行為を予測するシミュレーションがおこなわれている.膨大な個人情報の蓄積は,我々が自分で何かを判断する前に,するべきことの指針を提示してくれるようなシステムとして利用されている.それは,個人が何を選んだか,何を望んだか,何を考えたかということが,自動的に蓄積され,その個人情報の集積を元に,次にするべきこと,選ぶべき未来が,あらゆる場面で提示される.そのようなシステムの典型的な例としては,サイトにおける追跡広告である.自分の欲望が他者によって決定されているかのように見えるという点で,感情的な違和感を表明する人が多い一方で,このような機能は,便利なものとして受け入れられつつあり,すでに我々は,このようにデータベースと相互作用する振る舞いの中で生きている.
この相互作用は,我々自身の履歴に基づいた事実として,我々の意志決定に影響を与えており,決定論に志向している.それは我々の意思決定においてバイアスをかける.また社会的に生まれ持った属性や過去の犯罪履歴から,その後の人生が社会に対するリスクの計算によって予測され,断言されてしまうことを起こす.
インターネット,後のソーシャルメディアは,登場当初,無政府を標榜できるようなメディアとして登場したが,それは現在,国家や大企業による制御社会で力を行使する最高の手段となった.
我々は,技術者の観点からポスト・インターネット社会についての見解を示すことを目的としている.それは,技術で自由を得るための新しいや手法やツールを開発することも最終的には含んでいる.
かつて,リチャード・ストールマンは営利企業が開発し販売するソフトウェアを,新たにフリーソフトウェアとして書き直し,ソースコードを配布してユーザーに開放した.それは,企業が開発している私有ソフトウェアの多くが,ソースコードを隠蔽し,バイナリ表記の状態で流通しており,我々は例えソフトウェアが生活に不可欠なものであったとしても,その中身を見ることも知ることも不可能であることに起因する.すなわち,そこは外部からは立ち入ることのできない不可侵的な秘密の領域となる.
彼は,未来がコンピュータの時代になることを確信した上で,ユーザーが私有ソフトウェアによって行動が制限され縛られてしまうことを危惧し,ユーザーの自由と創造性のために「フリーソフトウェア」という考え方を広める活動を始めた.
これは,現在のインターネット,ソーシャルメディアにもそのままあてはまる.
一般的なコンピュータユーザーは,不・自由(自分の意図で操作できないよう)なコンピュータ環境に置かれたとき,ある自由と引き換えに,他方の自由を差し渡すことに気づいていない,さらに,自分が被っている犠牲に気がついていない.GAFAは支配者であり,我々は被支配者である.
我々は,個人のデータをシステムが今以上収集することを阻止するような仕組みを再設計する必要がある.すなわち我々が民主的に生きられるような新たなシステムを創出する必要がある.